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厳しい環境下でこそ生まれるカリテ プリ。コルビエールの魂のワインを造る“アルノー シェ”(営業1課 藤田進也)

カリテ プリ(qualité prix)という言葉があります。「(料理やワインの)品質が価格に見合うかそれ以上」という意味のフランス語で、手前味噌ではございますが、弊社が取り扱う各産地のワインにおいて共通して当てはまる言葉だと思っております。嬉しいことに、最近では様々な産地からカリテ プリなワインが日本に輸入され、手にできる機会が増えましたので、私自身一消費者として、よりカリテ プリなワインを探すことが楽しみである今日この頃ですが、個人的にここ何年かで飲んだフランスワインの中で最も「カリテ プリという言葉がぴったりだな」と感じたのが、今回ご紹介いたしますアルノー シェが造るワインです。

2016年5月に、ラングドックはAOCコルビエールにてワイン造りを行うアルノー シェ(以下、アルノー)の元を訪問しました。コルビエールはオード県の百数十の村で構成されており、海沿いから山間の内陸部までを含むというラングドック最大のアペラシオンで、その広さは何と約14,400ha!そのため、一言でコルビエールと言っても南北でその条件は大きく異なります。

ラングドックの代表都市の一つであるカルカッソンヌから南東へ約60km。“なだらかな”という言葉とは程遠い、非常に険しい山岳地帯を車で右に左に揺られながら約1時間半、ようやく辿り着いた先にアルノーがワイン造りを行うタレイラン村があります。この辺りは高いところで標高約400mとコルビエールの中では大変高く、そのため他のコルビエールの標高が低い畑よりも成熟期間が長いのが特徴で、通常は9月の第一週に収穫を行うところ、アルノーの畑では9月末~10月に収穫を行っています。

南80Km先にはピレネー山脈が聳え立ち、そこからの強い風が終日吹き荒れていることも大きな特徴で、特に若い葡萄樹はワイヤーでしっかりと固定しないとすぐに折れてしまう程の強風です。畑で話を聞いている最中も終始強い風に打たれている状態で、5月中旬の訪問にも関わらずとても肌寒く、もう一枚羽織るものを持ってくれば良かったと後悔したことをもよく覚えています。

現在、アルノーが栽培を行っている畑は36haあり、複数の区画に分かれています。シラーやグルナッシュを中心とした黒葡萄を中心に複数の品種を栽培しており、樹齢も様々です。
今回の訪問では、その内の何ヶ所かの畑を見学させてもらいましたが、その中でも特に印象的だったのが “マルコタージュ(marcottage)”という特殊な方法で栽培されているグルナッシュの畑です。


フィロキセラ禍以降、フランスにおけるほとんどの葡萄樹が、フィロキセラに耐性があるアメリカ産品種の台木に接ぎ木されていることは皆様ご存じの通りですが、フィロキセラ禍に負けなかった一部の葡萄樹を繁殖させるために採用されているのが、この“マルコタージュ=取り木”という栽培方法なのです。親株となる葡萄樹の枝を伸ばして地中に埋めることで、その枝が子株となり、その子株が新たな葡萄樹として育つという、主にブルゴーニュやロワールの一部にて古くから伝わる方法で、別名“プロヴィナージュ”とも呼ばれています。葡萄もこうして親から子へと繋がっているのだな、という姿はとても神秘的で感動しました。


前述通り、私は畑で話を聞いている数十分の時間でさえも、風が強く、寒くて辛く感じていたのですが、そんな環境下でも深く根を生やし、凛と立つ葡萄樹の姿はとても逞しいものでした。こういった環境下だからこそ、素晴らしい品質の葡萄、ワインが生まれるのだな、ということを改めて強く認識させられました。


そんな厳しい環境下で長年に渡り、葡萄と共に生きているのがアルノーのファミリーです。アルノーのファミリーは約100年前からこの地で葡萄栽培を行っており、アルノーで6代目になるというから驚きです。(この日はアルノーのお父さんも畑作業中だったので5代目と6代目の2ショットを撮影できました!)


1973年生まれのアルノーは、大学では歴史を専攻し、博士号も取得したという勉強家で、2000年に家業であるワイン造りを継ぎました。基本的なワイン造りは祖父から習い、その後は、ラングドックNo.1エノロジストとして名高いクロード グロやグザヴィエ ロジェ(写真上の右手の人物。以下、グザヴィエ)のコンサルタントを受けながらワイン造りを行っています。クロード グロはアルノーのことを「とても頭が良く、教えたことを一回で覚える」と評していますし、グザヴィエは「とても熱心で、勉強家」と話していました。畑の見学やテイスティング中に熱心に語る姿は、正にその言葉の通りでした。
突然ですが、上の写真とブログ1枚目の写真との違いがお分かりになりますか?
実は上の写真は前回訪問した2005年に、ブログ1枚目の写真は今回の訪問時に撮影したアルノーです。2005年当時は30代、現在は40代と年齢こそ重ねていますが、髪型や眼鏡などの若干の違いはあれど、10年前とほとんど変わらない、とても若々しくてエネルギッシュな方です。

現在、アルノーは赤ワインを中心とした複数のワインを生産しています。そのどれもが『カリテ プリ』で、ワインを飲んだ後に価格を確認すると、そのお値打ちさに驚いてしまいます。今回はそんなアルノーのワインの中でも、特におすすめしたいワインをご紹介いたします。

FB-359 L’Ame des Pierres Corbieres ラム デ ピエール コルビエール
Ame(アム)は「心、魂」を、Pierres(ピエール)は「石」を意味しています。先ほどご紹介しましたマルコタージュのグルナッシュを使用しています。平均収穫量は35hl/haと低いですが、過熟ではなく、とてもエレガント。ジューシーな赤い果実味があり、滑らかな口当たりで、余韻は長く続きます。このクオリティで、上代1,700円というから驚きです。

FB-884 La Vie D’Arnaud Corbieres ラヴィ ダルノー コルビエール
アルノーのワインのただ一つの残念な点は生産量が少ないこと。そのため、いつも需要に対して供給が追い付きません。その問題を解決すべく生まれたのが、このラヴィ ダルノー コルビエールです。このワインは、アルノーとコンサルタントのグザヴィエとの共同プロジェクトによるもので、アルノーとグザヴィエがテイスティングして、品質の良かったワインを購入し、ブレンドしています。ネゴシアンと言っても、全て畑で選別し手摘みで収穫したシラーとグルナッシュを使用しており、非常に丁寧な造りをしています。アルノーのドメーヌワインとも共通する葡萄のピュアさ、チャーミングな果実味があり、気負いなく飲め、それでいて物足りなさは皆無です。
ワイン名のLa Vie(ラ ヴィ)とは「人生」、つまり「アルノーの人生」という意味で、スタンダードのワインに「自分の人生」と名付けるところにアルノーの意気込みを感じられます。

私は、アルノーのワインには共通して、(過熟ではない)適切な熟し方をしたナチュラルな果実味があり、それでいてエレガントなワイン、という認識を持っていました。そして、それはどちらかというと「都会的で洗練された味わい」という印象でしたが、今回実際に訪問し、畑やセラーを見ると、その洗練されたワインの裏側には、厳しい環境下で長きに渡り葡萄を育み、日々弛まぬ努力を続けるアルノーの姿がありました。そして、それを感じさせないアルノーの人柄にもすっかり惚れ込んでしまいました。

厳しい環境下でこそ生まれるカリテ プリ。アルノーの魂のワインをぜひ皆様もご賞味ください。

営業1課 藤田進也

2017年3月

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