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1128年にまで遡る歴史を持つ、フランケンきっての名醸造所「スタートリッヒャー ホーフケラー」。フランケンワインの歴史と共に歩んできた、そのエピソードと最新情報をお伝えします。(本社ショールーム 藤野 晃治)

ドイツワインと聞くと、甘口ワインをイメージされる方が多いのではないでしょうか。しかし、実際は辛口・半辛口ワインの方が多く、今では生産量のおよそ65%を占めていると言われています。中でもフランケン地方は辛口ワインの銘醸地。ボックスボイテルという、背が低く胴にまるみのある特殊な形のボトルでも有名です。リースリングの他に、主にシルヴァーナーやミュラー トゥルガウといった葡萄品種が栽培されています。また、他の産地に比べ気温が高く、雨が非常に少ないため葡萄の集約感が高まります。ドイツのワインはよく女性に例えられることが多いのですが、このフランケンのワインはしっかりとした辛口タイプが多く、しばしば男性的と称されています。

もちろん、甘口ワインもドイツならではの個性や風土を表したワインばかりで魅力的ですが、今回は辛口ワインの銘醸地、フランケン地方の生産者「スタートリッヒャー ホーフケラー」をご紹介させていただきます。スタートリッヒャー ホーフケラーは1128年の証書に記載があるほどの歴史を持つワイナリーです。もともとは教会に管理されていましたが、1814年にバイエルン王国の所有となり、王国の崩壊後、1918年からバイエルン州所有のワイナリーとなりました。

ワイナリーはバロック及びロココの最も重要な建築家の一人であると考えられているバルタザール ノイマンが指揮を執り、18世紀の始め頃に建設されました。広大な庭園に囲まれた華麗な建築様式で、ヴェネチア出身の画家 ジョバンニ バティスタ ティエポロによるフレスコ画が残されています。また、キャンドルライトに照らされた回廊と丸天井のあるこの場所は、世界で最も印象深いワインセラーと言われ、1981年にはユネスコの世界遺産に登録されています。

前置きが長くなりましたが、今年3月の現地視察で得た最新の情報をお伝えいたします。

まずはヴィンテージ情報です。
「2017年の収穫量は平年と比較すると30%減となりました。霜の害と収穫時期の直前の大雨で葡萄が病気になってしまったのです。通常は70hl/haの収量ですが、50hl/haに留まりました」とThilo Heuft氏(写真右:バイエルン州に雇われているスタートリッヒャー ホーフケラーの取締役)。やはりワインは農作物。自然との厳しい戦いを制した末の、努力の結晶のようなものだと改めて思わされます。

続いて畑について伺いました。
「私たちは買い葡萄は一切使用せず、全て自社畑からの葡萄でワインをつくっています。生産量のおよそ85%が白ワインで、畑は合計で107ha。いずれも最高の畑ばかりです。所有する畑の半分は、「シュタイン」をはじめ、「インネレ ライステ」、「シュロスベルク」など名だたる銘醸畑が広がるマインドライエックにあります。いずれもマイン側沿いの斜面に分散しており、区画は数百に分かれています。
ヴュルツブルガー シュタインは全体で85haありますが、私たちを含めて3軒しか所有していません。ここは今後『シュタインベルク』と名称が変わる予定です。」シュタインは、かの文豪ゲーテが愛したワインとしても有名です。長い歴史を持つワイナリーだからこその銘醸畑のラインナップと言えます。
「畑では最高の品質を求めるため、成長の度合いによりますが7~8月にグリーンハーベストを行い、房の量を制限します。グローセス ゲヴェックスのクラスは半分の収量になるまで間引きします。余計な葉も落として、房の間に風通しを良くして病気を防いでいます。天然のコンポスト(葡萄の絞りカス)で畑を管理しており、生態の循環を意識しており、人工的なものは使用しません。また、機械での収穫は全体の10%未満です。VDP(ドイツ プレディカーツワイン生産者協会:ドイツの約200軒のエリート生産者が会員の100年以上の歴史を持つ民間団体)の規定により上級ワインは手摘みで収穫すること、との規定もあるのですが、それとは別に、私たちの哲学によるところも大きく、手摘みにこだわっています。」
州営の醸造所というと、大きなワイナリーで大量生産を行っている、というイメージもありますが、決してそうではないことがこの会話から汲み取っていただけるのではないでしょうか。グリーンハーベストを行うことによって、天候の変化などに対するリスクが高まってしまうのではないか、と私たちが質問したところ、次のような台詞が返ってきました。
「もちろんリスクは増えます。しかし私たちの仕事は、自然と共存することですので、そのリスクと向き合うべきであると考えているのです。」
 スタートリッヒャー ホーフケラーの哲学が感じられる瞬間でした。


続けて土壌についても説明してくださいました。それによると、フランケン地方の土壌は、以下の4つに主に分けられるそうです。

Muschelkalk:貝による石灰質土壌。白ワインに適しており、このエリアでは最も重要な土壌。ミネラル香の高いワインになり、舌先で塩分さえ感じる。骨格があり、長期熟成向きのワインが造られる。石が密集しているため酸が高くなり、長くフレッシュな状態を保つことができる。この土壌はドイツでもフランケンならではのもので、ブルゴーニュと同じ時期の土壌と言われている。
Buntsandstein:赤や茶色の砂岩。シュペートブルグンダーやフリューブルグンダーに適した土壌。砂岩が日中の太陽熱を吸収し、夜間も熱を保持しているため、寒いエリアだが成長が促進される。したがって熟しが早く、高品質の赤ワインが出来る。
Urgestein:赤や茶色、灰色の砂岩や粘土が混ざった土壌。Buntsandsteinよりも、石が砕けている分細かい。シルヴァーナやミュラー トゥルガウに適している。
・Keuper:石のないパウダー状の土で覆われた粘土質土壌。力強いワインが出来る。シルヴァーナやミュラートゥルガウに適している。

フランケンのワインと一言では言い表せないほど複雑ですね。こうして土壌ごとに適した葡萄品種を植えることで、ワインの品質を高めることが出来ます。長い歴史と、バイエルン州が管理しているということからくる研究的視点での栽培・醸造が、ワインの美味しさにも繋がっています。


畑仕事へのこだわりを教えていただいたところで、いよいよ醸造についてお伺いします。その前に、簡単にワイナリーのチームについてご説明します。この写真の人物は、ケラーマイスター(醸造責任者)のKlaus Kuhn(クラウス クーン)氏です。他に4名の方が年間を通して彼をサポートしており、さらに4人の栽培担当者が、それぞれのエリアの畑を管理しています。収穫時期には約80人もの人を雇うそうです。
スタートリッヒャー ホーフケラーのワインはほとんどが辛口です。残糖は約1~3g/ℓで、これは砂糖を添加したわけではなく、自然に発酵が終わった後に残った糖分となっています。
「醸造のプロセスについては、品種や葡萄の状態によって異なりますが、例えば完熟して綺麗な状態のリースリングであれば、除梗して窒素を充填してから8度に温度を下げて1晩醸しを行います。これにより心地よい青リンゴや西洋ナシ、柑橘系の香りを引き出します。その後、プロマティックプレスで2バール以下の気圧でプレスし、選別酵母で14~15度の温度で2日~6週間発酵させます。発酵後、上澄みを別のタンクに移し、大きな澱を取り除いて、6~8ヶ月良質な澱と接触させて熟成させます。一方、Q.b.A.クラスは1~3ヶ月です。」
スタートリッヒャー ホーフケラーのワインは、その所有畑の素晴らしさから、葡萄そのもののポテンシャルが高く、結果としてワインの品質も高いのだとは思っていました。しかし、こうしてお話を伺ってみると、醸造面でも様々な工夫をして、品質追求に余念のない造り手だということに気付くことが出来ました。


<スタートリッヒャー ホーフケラーとは>
①1128年にまで遡る、およそ900年にも及ぶ歴史ある生産者です。
②フランケン最高の畑「ヴュルツブルガー シュタイン」を所有している3軒のうちのひとつ。かの文豪ゲーテもシュタインのワインを愛したと言われており、歴史的にも重要な畑です。
③バイエルン州管轄の元、農業試験場のように自社畑を管理し、最高の状態を保ちながら研究をし続けています。
④畑仕事では、天然のコンポストを使用し、人工的なものは使用しません。また、収穫も手作業がほとんどです。病害などのリスクにも、「私たちの仕事は自然との共存だ」と言い、リスクをあえて受け入れています。そのため、より畑仕事に力を入れているともいえます。
⑤醸造では、クリーンな味わいと果実のアロマを引き出すために、窒素を充填し温度を下げることで果汁の酸化を防いでいます。さらに、澱と長期間寝かせることで、より複雑な味わいをワインに与えています。

<ラインナップ>
一般的に、フランケンのワインは他のドイツワインと比較すると、価格は高い傾向があります。銘醸畑を所有する生産者では、当然その傾向がより強くなります。しかしながら、私たちはスタートリッヒャー ホーフケラーより、「日本で少しでもフランケンワインを広げて欲しい」という思いを託されており、そのために特別な価格で分けて頂いております。

KA512 ヘルスタイナー アプツブルク シルヴァーナ QbA トロッケン 2014 参考上代2,700円(税込)
1255年に名づけられ、1803年までオッフェンバッハのゼーリゲンシュタット修道院が所有していた優良な単一畑で、現在VDPの認定するエアステ ラーゲ(1級畑)「アプツブルク」の区画からのワイン。フルーティで繊細、ぴりっとした風味があり持続性が長いことが特徴的です。

KA117 ヴュルツブルガー リースリング QbA トロッケン 2016 参考上代2,808円(税込)
フランケンの特殊な土壌「Muschelkalk(貝殻を含む石灰岩質土壌)」からのワイン。今回、2017年のものを試飲して参りましたが、集約感のある果実味があり、酸がシャープで、グレープフルーツなどの柑橘の余韻が心地よい味わいでした。この2016年も、軽やかでバランスの良いワインに仕上がっています。

KA548 ランダースアッカーラー マルスベルク シルヴァーナー QbA トロッケン 2016 参考上代3,456円(税込)
ランダースアッカーラー村の単一畑で、VDPの認定するエアステ ラーゲ(1級畑)「マルスベルク」からのワイン。土壌は貝殻の化石を含む石灰岩質で、はつらつとしたフルーティなアロマ、豊かなミネラルと共に、舌の上にスパイシーな要素がはっきりと感じられます。

フランケンワインの歴史と共に歩んできた、ヴュルツブルクきっての名生産者、スタートリッヒャー ホーフケラー。その情熱とこだわりを、ぜひワインを飲んで体験してみてください!

本社ショールーム 藤野 晃治

2018年8月

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