INABA WINE BLOG

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2010年8月 6日 08:00 Category 稲葉通信

ジャン ブスケ 62歳。一人の男の力が、世界でも珍しい高地のワイン地域「トゥプンガト」の名を世界に知らしめた。

営業4課森本です。
今回、私がご紹介する造り手は、アルゼンチンにあるトゥプンガトの"ドメーヌ" ジャン ブスケです。 アルゼンチンワインは全体の生産量の約70%をメンドーサ産地が占めています。メンドーサ中央から南西に約60-90kmに位置する世界でも珍しい標高1,200mの高地にある地区が「トゥプンガト」です。

ブスケ01.jpg アンデス山脈の裾野にあるトゥプンガトの街は今、ワイン産業はもちろんのこと、世界の投資家の熱い注目の的になっています。これまで産業と呼べるものはほとんど存在しなかったのに、この数年間で海外企業の参入が続出し、街には多くのワイン関係者が訪れ人口も増加し、3年前にはカルフールもできました。ワイン産業には大手が率先して参入し、有名コンサルタントのミッシェル ロランも600haの畑を購入したそうです。ジャン ブスケは、1997年にまだこの土地にまだ何もなかった頃、1haあたり1,000ドルで購入しました。それがなんと僅か13年で15,000~20,000ドルという実に15倍以上もの高騰をみせているのです。今やトゥプンガト地区は、ワイン産業によって潤う、昔のナパヴァレーのようです。

ではなぜ、この地がこんなにも注目されるようになったのでしょう?
それは、"ドメーヌ" ジャン ブスケを知ればわかります。

ブスケ02.jpg ジャン ブスケは、南仏のカルカッソンヌでワインを造っていましたが、常に新しい環境を求め、世界中のワイン産地を訪ね歩いていました。その中でも、特にアルゼンチンを気に入り、アルゼンチン国内を重点的に観察したところ、当時は何もない荒野であったトゥプンガトの気候と砂質の土壌に惹かれ、この場所でワインを造りたいという衝動に駆られたそうです。実際、この地はアンデス山脈のミネラル分豊富な雪解け水による肥沃な土壌と、年間通じて雨量が少なく、日夜の寒暖差が大きな気候が備わった、まさに葡萄栽培の理想地なのです。

「思い立ったら吉日」という言葉を地で行くような気骨なジャン ブスケは、50歳で第2の人生に踏み切り、フランスにある自分の畑や資産をすべて売り払い、単身でトゥプンガトに移り住んで、荒れ果てた大地を一歩ずつ開墾しました。そう、"ドメーヌ" ジャン ブスケは、高地トゥプンガトに葡萄を植えた最初の生産者:パイオニアだったのです。

「アルゼンチンに行くと言ったら、フランスではあんな国に行くなんてとバカにされ、アルゼンチンに来たら、アルゼンチンの人からもなぜこんな何もない場所でワイン造りをするんだ?フランスの地を捨ててまでとバカにされました。ところが、始めはクレイジーだと言っていた人々が、今では真似しています。クレイジーと言われなくなりましたが、それが悩みです。新しい何かを生み出す行動が起こせていないということですから。
フランスのチーズや食べ物が恋しくなることはあっても、人生を賭すにはアルゼンチンの方が良いです。小さい頃から、新しい土地へ出掛けるのが大好きでした。リスクを負ってでも、自由な発想で、何にも囚われることなく、新しいことにチャレンジしていきたいです。」

ブスケ03.jpg 私は、この「クレイジー」という言葉を聞いた瞬間、鳥肌が立つ思いに駆られました。なぜなら、ジャンさんの行動がきっかけで今の街が発展してきたのですから、そしてそれが、情熱に駆られた僅か一人の男の挑戦によって、こんなにもこの地に大きな影響をもたらされるものなのかと、男として深く尊敬せずにはいられませんでした。

"ドメーヌ" ジャン ブスケのオーナー ジャンさんは、上記でお分かりのように、非常にヴァイタリティに溢れた人です。フランスを出ようと考えた理由も、「フランスには、確固たるワインビジネスは根付いているものの、一方では新しいものに挑戦するには非常に難しい土地であるため・・・」とおっしゃっていました。
しかし、ジャンさんの苦労は並大抵のものではなかったようです。植樹して5年目、ようやく初ワインのための葡萄を収穫した時、感無量、葡萄を両手いっぱいにして、喜びのあまり男泣きしてしまったそうです。

彼のこのチャレンジ精神は、当然ワイン造りにも、大きな影響を及ぼしています。

始めに驚いたのは、ここは樽の博物館かと思わせるくらい、多種多様な樽が使われていたこと。(樽や全てのセラー設備はフランスから送ったそうです。)

ブスケ04.jpg ブスケ05.jpg ブスケ06.jpg 樽の中に葡萄ごと入れて発酵させる方法。

ブスケ07.jpg ブスケ08.jpg 「もっともっとよいワインを造りたい!」
そのためには、どれが最善の方法であるかを常に模索していく。
ジャンさん自身を表したようなセラーでした。

スタッフも現在、万全の体制が整いました。
12年間フランスのヴュー テレグラフ(シャトーヌフ デュ パプのトップ生産者)でエノロジストとして働いていたレオナルド・ボルシさんが2010年の収穫(3月)からチーフワインメーカーとして加わり、今後、更なるパワーアップを期待できます。

ブスケ09.jpg セールスやマネイジメントには、ブリュッセルで金融証券会社に携わっていた娘夫婦が、輝かしい経歴を捨てて、2009年末から父の元、アルゼンチンに移住してきました。

ブスケ10.jpg ブスケ11.jpg 実際、ワイン自体もヴィンテージを追うごとに、明らかにレベルアップしています。
訪問前の春の試飲会で、「ジャン ブスケがいいねぇ!」と何人かのお客様からお声掛けを頂いたのですが、現地で新しいヴィンテージを試飲したところ、さらに今を上回る驚きの品質レベル!!

そんなワインの中でも、おすすめしたいものが、「マルベック」です。
苗木はすべてフランスから取り寄せたものですが、マルベックだけは例外で、アルゼンチンに元々あったものを植えました。この品種だけは、アルゼンチンのオリジナルクローンのほうがここの強い日差しや乾燥に適して、よりよいワインが造れるそうです。
50%樽(400L、225L、それぞれ2~4年樽)で6ヶ月間熟成、50%コンクリートタンク。まるでリパッソやアマローネを思わせるような深み。ビターなチョコレートを思わせる風味があります。ジャン ブスケのワイン全体に共通することですが、凝縮感と豊かな果実味が感じられますが、エレガントでバランスがよく、口当たりは滑らかでやさしく、するすると喉を通ります。マルベックは好きじゃないと言われる理由となりがちな茎っぽい風味は全く感じられず、多くの日本人の好む味わいではないでしょうか。

ブスケ12.jpg トゥプンガトを切り開き、ジャンさんらしいワイン造りもいっそう充実してきて、完全にジャンさんもアルゼンチンに染まったように思えますが、しかし、彼にはやっぱりどこまでもフランス人を感じるのが不思議でもありました。
社会的に裕福な層がワインビジネスに携わる南米の中で、"ドメーヌ" ジャン ブスケは特殊で、フランスの特に南仏やブルゴーニュの個人生産者と同じ雰囲気が漂っています。
アルゼンチンであっても、ボデガでもなく、ワイナリーでもなく、やっぱり"ドメーヌ"だと感じてしまいます。
そして、ドメーヌという言葉には、「家族」という雰囲気がピッタリだと、ジャン ブスケを訪問して気付きました。

ブスケ13.jpg テクニカル的なことは、今回はあまり深く書けませんでしたが、トゥプンガトが非常に注目を集めているエリアであることと、ジャンさんの人となりを感じていただけたら幸いです。
最後に、ビジネスに興味がある方に朗報です。
金融業を長く携わっていた娘アンネさんによると、トゥプンガトは急速に発展を遂げている中、まだ良いホテルや美味しいレストラン、ワイン バーもないので、最初に事業投資した人は確実に大きな資産を築くことができるそうです。お金にゆとりのある方や料理の腕に自信がある方は、ジャンさんのように新たな土地で第2の人生に挑戦してみてはいかがでしょう・・・

おすすめはなんと言ってもマルベックです。
 A-108 2008 マルベック ¥1,500
そしてフランス産バリックで熟成した
 A-111 2008 マルベック レセルバ ¥2,000

営業4課・森本展弘

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