ワインブログ ―wine blog―

近年では希少な低価格で樽の風味を感じるスタイルが魅力的。スペインとポルトガルとの国境近くの何もない荒野を耕し、飛躍を続ける「アシエンダ ゾリータ」(営業1課 清高 直大)

営業1課の清高直大です。
今年の3月、スペイン北西部を中心に8つの生産者を訪問致しましたが、最後に訪問した生産者、地域となります。スペインのサラマンカから西へ100kmほど進んだ場所に位置し、リオハから車で約3時間半~4時間の場所。ポルトガルの国境にも近い、アリベス デル ドゥエロにある「アシエンダ ゾリータ」の訪問内容をご報告致します。アシエンダ ゾリータはワイナリ―とは異なる場所にホテルなどのリゾート施設やオーガニックファームなどを経営しており、事業が多岐に渡ります。

ワイナリーの周りは目立った建物はなく、どこまでも荒野が続いています。海抜720m、夏は暑く、冬は寒い地域です。
誰もがこの地でワインを造ることを想像することはありませんでしたが、1999年、この地の可能性と将来に着目し、70haの畑を耕しました。

2000年に建築されたアシエンダ ゾリータのワイナリー。古風に見えますが伝統を感じさせる造りとなっています。

まずは、この地域の土壌について御紹介します。
表面は砂でフィルターのように水を通します。20cmほどの地中には花崗岩の岩盤が広がります。元々、花崗岩盤があるため、水はけが悪く、葡萄栽培には不向きな土地でありますが、岩の厚い箇所はダイナマイトで爆破しており、畑には適度な大きさとなった花崗岩が散りばめられています。
また、部分的に花崗岩が多い場所があります。花崗岩はワインの味に影響をもたらしますが、葡萄栽培に必要な水はけが悪く、全く水を通さない難点もあります。そのため、「ドリップ イリゲ―ション」を取り入れており、地中にホースを這わせ水を排出することで、葡萄栽培を可能にしました。そのホースの総延長はなんと21kmにも及びます。排出した水は人工湖に貯め、3,500万ℓキープ可能です。(メルロの畑にある川石は水の影響で浸食し退化するため、注意しています。)


続いて、葡萄について御紹介します。
アリベス デル ドゥエロで栽培しているのは、テンプラニーリョ、シラー、メルロ、少量のマルベック、そしてカベルネ ソーヴィニヨン。その中で、テンプラニーリョとシラーを多く栽培しています。ここのシラーの品質はスペイン全土でも非常に素晴らしいものだという自信を持っています。

2015年ヴィンテージに関してですが収穫はこれまでよりも早く始まりました。最も早いのがメルロで10月1日から収穫がスタート、その後、マルベック、カベルネ ソーヴィニヨン、テンプラニーリョと続き、最後がシラーとなりました。葡萄の品質は抜きん出ています。干ばつ(雨が無い)のおかげで葡萄は素晴らしく健全で、まったく傷みなどもなかったそうです。
また収穫量も昨年より増え、9月の昼夜の気温差が大きかったおかげで、葡萄はゆっくりと成熟が進み、十分な酸とポリフェノールの形成が促され、収穫された葡萄の酸とアルコール度数の比率は素晴らしく、ワインは非常に鮮やかで生き生きとした色合い、非常にバランスが良く、フレッシュでとてもフルーティ、熟したタンニンとしっかりとした骨格があり、また樽熟成に非常に適しています。


仕立ては”スマート ダイソン”式を採用しています。
この仕立ては、枝を上下に伸びるようにしています。オーストラリアの葡萄栽培学者であるリチャード スマート博士の指導により、この仕立てを採用しました。リチャード スマート博士は、葡萄の収量を十分確保し、なおかつ品質の高い葡萄を育てる方法や、テロワールと共に樹勢のコントロールで葡萄の品質を上げる栽培方法を提唱しています。この仕立て方では、葉が成長すると、人よりも高い2mほどの壁になるそうです。そのため、より多くの日光を吸収することができます。葡萄の成熟にとって重要な要素であり、ゆっくりと成熟して良い状態がもたらされます。色もしっかりとつき、枝は上下に伸び、下部も葉っぱで満たされます。

収穫時期が近づくと毎日葡萄の酸、タンニン、ポリフェノール、ミネラル等を分析し、ワインメーカーが収穫の日を指定します。例年10月頃に収穫するそうです。この地域の10月は寒いことが多く、日中の気温は15℃前後です。日中の気温が高い年は、朝や夜に収穫します。年によってはグリーンハーベストを行います。アシエンダ ゾリータ(S-123)等のスタンダードクラスの葡萄は機械で行い、アシエンダ ゾリータ シラー(S-193)等のハイクラスは手摘みで行います。


ここで、ワイナリーに関わるスタッフをご紹介致します。

写真左・アルマ ガルシア…アシエンダ ゾリータ設立後の間もない2001年から携わっています。リベラ デル ドゥエロのすぐ近くにあるバリャドリードの大学で醸造の勉強をしていました。またサラマンカの大学では化学を専攻しており、2つの学位を取得しています。
どの仕事の分野でも女性の活躍が目覚ましい時代ですが、今回のスペインのワイナリー訪問でも同様に女性ワインメーカーたちの凛とした存在感を感じることができました。前回、御紹介した「カステロ ディ メディナ」や「ゴデリア」のワインメーカーと同様に、アシエンダ ゾリータでも世界中から注目を集める素晴らしい女性ワインメーカーが活躍しています。それがアルマ ガルシアです。幾多の困難や苦労があると思いますが、彼女は常にポジティヴ、そして強い信念を持ってワイン造りに愛情を注いでいます。そのため高い信頼を得ています。ワインもその印象を反映するかのように女性らしさや繊細さ、女性ならではの力強さ、包み込むような味わいなど様々な印象も魅せてくれます。

写真右・ラファエル サルガド…アジア、アメリカ等幅広く担当している輸出マネージャー。18歳の頃、リアス バイシャスに住んでいました。ナバラ大学卒。オリーブオイル農家出身で、自身もオリーブオイルのプロフェッショナル。ワイナリーやオリーブオイルの会社を経て、2010年5月からアシエンダ ゾリータに勤務しています。


ワイン造り、醸造所についてお伝えします。
選別・選果テーブルにて除梗は100%行います。ハイクラスの葡萄は手摘み後、稼働する選果テーブルにて更に葡萄を厳しく選別しています。その後、16℃~21℃でアルコール発酵を行い、2~3週間発酵が続きます。ハイクラスは人工酵母を使用しています。アルマ自身が酵母の特性を理解しており、一番慣れているようです。そのため、自分の判断で発酵を調節することも可能で、タンクにあるワインの様子が常にわかるそうです。アシエンダ ゾリータ(S-123)は天然酵母を使用しています。生産量も多く、リリースのペースも早いため大きいタンクを使用しております。しかし、大きいタンクに入っていると天然酵母の様子がわかりにくいため、良い品質のワインを造る上で苦労が伴うそうです。多くの方に楽しんでいただきたいからこそ、日々、努力を続けています。
発酵が終わったあと、プレス機で絞ったジュースと澱とを分けてブレンドし、中に一緒に入れます。
マロラクティック発酵18~20℃、ハイクラス用ワインもタンクでマロラクティック発酵を行います。マロラクティック発酵が1ヵ月前後続いて、全てのワインは樽に移動し熟成させます。品種ごとに別々に醸造を行います。。
このワイナリーは最新の設備が導入されており、100万本生産することが可能です。ボトリングマシンは1時間に5,000本処理することが可能。全てオートマティックのため、ボトリングするだけではなく、箱詰やテーピングも行ってくれるというのですから驚きです。
樽はアメリカンオークとフレンチオークを使用します。フレンチオークは新樽のみを使います。
アシエンダ ゾリータのワインは低価格ながらもパフォーマンスが高く、国内外でも高い評価を得ながら、その品質は認められています。今回は前述にも記載されていた主軸となる2種類のワインをご紹介致します。

S-123  Hacienda  Zorita
葡萄品種はテンプラニーリョ。熟成は、フレンチオーク50%とアメリカンオーク50%(それぞれ新樽~5年樽を使用)で12ヶ月です。
視察メンバーも低価格とは思えない程のコストパフォーマンスを感じ、私自身ももっと多くの方に知っていただきたいワインだと改めて実感致しました。果実の凝縮感と僅かにハーブの様な清涼感。樽の甘み、力強くもバランス良く美味しいワインであることに満足致しました。

S-193  Hacienda Zorita Syrah
 
生産者は「赤い果実が豊富でスパイシー、スモークな香りも感じられる。グラスの中の変化が激しく、ローヌのシラー、オーストラリアのシラーと比べて、あまり花の香りは広がらないがフルーティである。タンニンは固くないが、長い余韻が広がると思う。そして典型的なシラーのようなガチガチな感じはない。」と話してくれました。

樽をあまり付けない生産者が多い中で、珍しいほど樽熟成の力強さを感じました。

当社の生産者の中には、周りの誰もが驚き、出来るはずがないと言われながらも雑音に惑わされず、自分達を信じ続け夢を実現させた生産者がいます。誰もが挑戦しなかった地域で情熱を持ってワイン造りに励み、飛躍している生産者がいますが「アシエンダ ゾリータ」もその一つだと思います。何もない荒野に対し、可能性や将来のヴィジョンをしっかり持っていたこと。綿密な準備や計画と取り組み、挑戦し続ける姿や言葉を今回の視察訪問で感じることができました。
決して簡単なことではありませんが今の時代だからこそ、どのような時もその強い気持ちと常に将来を考えた計画が改めて大事だと思いました。

ワイナリーを設立したことがゴールではなく、その先の目標(より品質の高いワインを造る)も明確でした。現状には決して満足していないため、女性ワインメーカーのアルマ ガルシア氏の努力により、これから先も品質は更に向上していくと感じます。まずは、スペインらしさ、自分らしさを貫き通し、何もない荒野を耕して生まれたアシエンダ ゾリータをお楽しみ下さい。価格以上のテンプラニーリョの魅惑と近年では希少な樽熟成によるスタイルを是非体感していただきたいと思います。

営業1課 清高直大

2020年11月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

TOPへ戻る