ドメーヌ イヴォン エ ローラン ヴォコレ
パリの星付きレストランでオンリスト/輸出はわずか2%
「鮮やかなグリーンカラー。このカラーこそ私たちの信念なんだ」
ヴォコレ家は、1713年から葡萄栽培、ワイン造りをしてきた歴史を持つ生産者です。イヴォン エ ローラン ヴォコレのシャブリは、一言でいえば”ピュアなシャブリ”です。当主のイヴォンは、にこやかで冗談の絶えない明るいお父さん。「テロワール、ヴィンテージの特徴、そしてアペラシオンの個性を尊重している」と、その哲学を語ってくれました。葡萄の平均樹齢は45 年と古く、全体の50%は40年以上、20%は約80年という古木です。畑はリュット レゾネ(減農薬栽培)で管理し、肥料は45年間にわたって羊の糞由来のものしか使用していません。また防カビ剤、除草剤も使用せず、雑草は畑を耕すことで取り除いています。所有する26haの内、20haほどは機械で、残りのプルミエ クリュや、より高樹齢の6haほどは主に手作業で収穫します。機械収穫のメリットは、ベストなタイミングで一度に収穫できることです。また、しっかりと完熟していることを確認し、収穫時に葡萄が傷つかないようにしています。
「収穫のポイントは、完熟するのを待つこと。シャブリでは、早く摘み取ってしまう人が多いけれど、私は早すぎず遅すぎず、ちょうどよい時期を見極める。たとえ他の人が収穫を始めていても、完熟するまで焦らずに待つ。これによって得られる、鮮やかなグリーンカラー。このカラーこそ私たちの信念なんだ」
「一番大事なのは、自然がもたらしてくれるものをリスペクトし、それを活かすように醸造すること」
こうした哲学の元で出来上がるシャブリは、そのほとんどが地元で消費されています。また、パリの「アルページュ」、「アピシウス」、「エレーヌ ダローズ」といった星付きレストランでオンリストされるなど、まさにフランス人の生活に寄り添うようなシャブリと言えます。『ヴィノス』のライターであるイアン ダガタ氏は、フランス北西部サン マロにあるレストラン「L’Ancrage」で、彼らのシャブリ 2016年(FB980)を飲んだことを紹介し、「深く複雑な味わい」として90点の高評価を与えています。
イヴォンは、長く熟成させることが出来るスタイルを目指していると言います。その秘訣について聞いたところ、「ワインメーカーの腕もある」と冗談めかしながらも、「一番大事なのは、自然がもたらしてくれるものをリスペクトし、それを活かすように醸造することだよ」と話してくれました。またイヴォンは、一般的に行われているスタビリゼーション(冷却処理によって酒石酸を酒石として沈殿させ、事前に取り除くこと)を行なっていません。そのため、通常のワインよりも、酒石の析出が起きやすい状態となっています。イヴォンは、胸に手を当てながら、ジェスチャー交じりに熱く語ります。
「酒石酸はワインにとって絶対的な存在。取ってしまうとワインではなくなってしまう。ワインが、”私の一部を取らないで”と言っている! ……それは自然に反することなんだ」
2016年4月にドメーヌを訪問した際、最新ヴィンテージのワインの他に、古いヴィンテージのもの(’88VT、’76VT)をいくつか試飲させていだだき、ヴィンテージによっては25~40年と、美しく熟成することが出来ることを知りました。ヴォコレスタイルと言える長熟を可能しているのは、ワインにとって絶対的存在の酒石を落とさないこと。そして、しっかり完熟を待って収穫し、完璧なアロマと熟度を求めているからです。「すべての年がこのように熟成できるわけではないが、糖分と酸のバランスだ」とイヴォンは話していました。
ドメーヌを象徴する2つのプルミエ クリュ「ロム モール(死者)」と「フルショーム(絞首台)」
イヴォン エ ローラン ヴォコレは、シャブリ村から13kmほど北に位置するマリニー村でワイン造りをしています。グラン クリュの畑は所有していません。所有する葡萄畑はAOC プルミエ クリュのロム モールに0.68ha、フルショームに1.36ha、AOC シャブリに20.14ha、AOC プティ シャブリに4.17haで、合計26haほどです。
シャブリのプルミエ クリュには、複数の区画が同じ名前を名乗ることが出来るものがあり、フルショームはその1つです。フルショームという区画の他に、ロム モール、ヴォーピュラン、コート ド フォントニーと、やや離れた位置にあるヴォーロランの区画がフルショームを名乗ることが出来ます。フルショームの方が著名なため、あえて区画名でリリースしない生産者も多く、ロム モール名のシャブリはそれほど多くありません。イヴォンは、この2つの区画をそれぞれ別のワインとしてリリースしています。
ロム モールは、「死者」、フルショームは「絞首台」という意味があると言われています。由来については「中世の頃、王国が反乱者をフルショームで処刑し、現在のロム モールに埋葬したという話もあるよ」と話してくれました。ワインの名前としてはなんとも恐ろしげですが、「ロム モール」は渓谷の入り口にあった小さな墓地に由来するという説もあり、実際に骸骨の入った石棺も見つかっているそうです。また、「フルショーム」も「石灰窯(four à chaux)」や「分岐点(fourche)」に由来するという説があります。
「フルショームは、さわやかな柑橘系の果実のアロマの中に硬質なミネラル、スモーキーなニュアンスが感じられる。ロム モールは、フルショームよりも畑に石が多く、よりミネラル感が強い。土壌由来のしっかりとしたボディがあるワインになる」
家族の歴史をつなぐ特別なキュヴェ「ルネサンス “1928”」
イヴォン エ ローラン ヴォコレの歴史は、家族の歴史と言い換えることが出来ます。現オーナーのイヴォンは1955年生まれ。ワイナリーの5代目当主として日々活躍しています。18歳の頃に父モーリスと共に働き始め、1979年、24際の頃にワイナリーを引き継ぎました。ちょうどその年、息子のローランが生まれます。1985年には、自社瓶詰めを開始。以来、地元やフランス国内で人気を博しています。
2009年にはローランもドメーヌに参加し、主に醸造を担当するようになりました。イヴォンは、息子がドメーヌを引き継いでくれることをとても喜んでおり、自身はさらに畑での仕事を行えるようになりました。「父から私へ、そして私から息子へ継承する。そんなワイン造りを行なっているんだ」。
そんなヴォコレ家を象徴するワインが、「ルネサンス ”1928”」です。ワイン造りに情熱を注いだ、イヴォンの父でありローランの祖父にあたる、1928年生まれのモーリスに捧げたキュヴェです。ステンレスタンクが導入される以前の、昔ながらの伝統的なシャブリといえます。樽発酵・樽熟成で仕込む特別なキュヴェで、熟成はローランが担当しています。樽発酵・樽熟成のワインは、ステンレスタンク発酵・樽熟成のワインよりも、樽香は穏やかになります。これは、酵母が樽の内壁をコーティングすることで、熟成中の樽からの成分抽出を防ぐためとされています。
「樽発酵は、味に大きな影響を与えることはない。テロワールの特徴が出て、ワインに調和を生み出す」
ヴォコレ家は、1713年から葡萄栽培、ワイン造りをしてきた歴史を持つ生産者です。イヴォン エ ローラン ヴォコレのシャブリは、一言でいえば”ピュアなシャブリ”です。当主のイヴォンは、にこやかで冗談の絶えない明るいお父さん。「テロワール、ヴィンテージの特徴、そしてアペラシオンの個性を尊重している」と、その哲学を語ってくれました。葡萄の平均樹齢は45 年と古く、全体の50%は40年以上、20%は約80年という古木です。畑はリュット レゾネ(減農薬栽培)で管理し、肥料は45年間にわたって羊の糞由来のものしか使用していません。また防カビ剤、除草剤も使用せず、雑草は畑を耕すことで取り除いています。所有する26haの内、20haほどは機械で、残りのプルミエ クリュや、より高樹齢の6haほどは主に手作業で収穫します。機械収穫のメリットは、ベストなタイミングで一度に収穫できることです。また、しっかりと完熟していることを確認し、収穫時に葡萄が傷つかないようにしています。
「収穫のポイントは、完熟するのを待つこと。シャブリでは、早く摘み取ってしまう人が多いけれど、私は早すぎず遅すぎず、ちょうどよい時期を見極める。たとえ他の人が収穫を始めていても、完熟するまで焦らずに待つ。これによって得られる、鮮やかなグリーンカラー。このカラーこそ私たちの信念なんだ」
「一番大事なのは、自然がもたらしてくれるものをリスペクトし、それを活かすように醸造すること」
こうした哲学の元で出来上がるシャブリは、そのほとんどが地元で消費されています。また、パリの「アルページュ」、「アピシウス」、「エレーヌ ダローズ」といった星付きレストランでオンリストされるなど、まさにフランス人の生活に寄り添うようなシャブリと言えます。『ヴィノス』のライターであるイアン ダガタ氏は、フランス北西部サン マロにあるレストラン「L’Ancrage」で、彼らのシャブリ 2016年(FB980)を飲んだことを紹介し、「深く複雑な味わい」として90点の高評価を与えています。
イヴォンは、長く熟成させることが出来るスタイルを目指していると言います。その秘訣について聞いたところ、「ワインメーカーの腕もある」と冗談めかしながらも、「一番大事なのは、自然がもたらしてくれるものをリスペクトし、それを活かすように醸造することだよ」と話してくれました。またイヴォンは、一般的に行われているスタビリゼーション(冷却処理によって酒石酸を酒石として沈殿させ、事前に取り除くこと)を行なっていません。そのため、通常のワインよりも、酒石の析出が起きやすい状態となっています。イヴォンは、胸に手を当てながら、ジェスチャー交じりに熱く語ります。
「酒石酸はワインにとって絶対的な存在。取ってしまうとワインではなくなってしまう。ワインが、”私の一部を取らないで”と言っている! ……それは自然に反することなんだ」
2016年4月にドメーヌを訪問した際、最新ヴィンテージのワインの他に、古いヴィンテージのもの(’88VT、’76VT)をいくつか試飲させていだだき、ヴィンテージによっては25~40年と、美しく熟成することが出来ることを知りました。ヴォコレスタイルと言える長熟を可能しているのは、ワインにとって絶対的存在の酒石を落とさないこと。そして、しっかり完熟を待って収穫し、完璧なアロマと熟度を求めているからです。「すべての年がこのように熟成できるわけではないが、糖分と酸のバランスだ」とイヴォンは話していました。
ドメーヌを象徴する2つのプルミエ クリュ「ロム モール(死者)」と「フルショーム(絞首台)」
イヴォン エ ローラン ヴォコレは、シャブリ村から13kmほど北に位置するマリニー村でワイン造りをしています。グラン クリュの畑は所有していません。所有する葡萄畑はAOC プルミエ クリュのロム モールに0.68ha、フルショームに1.36ha、AOC シャブリに20.14ha、AOC プティ シャブリに4.17haで、合計26haほどです。
シャブリのプルミエ クリュには、複数の区画が同じ名前を名乗ることが出来るものがあり、フルショームはその1つです。フルショームという区画の他に、ロム モール、ヴォーピュラン、コート ド フォントニーと、やや離れた位置にあるヴォーロランの区画がフルショームを名乗ることが出来ます。フルショームの方が著名なため、あえて区画名でリリースしない生産者も多く、ロム モール名のシャブリはそれほど多くありません。イヴォンは、この2つの区画をそれぞれ別のワインとしてリリースしています。
ロム モールは、「死者」、フルショームは「絞首台」という意味があると言われています。由来については「中世の頃、王国が反乱者をフルショームで処刑し、現在のロム モールに埋葬したという話もあるよ」と話してくれました。ワインの名前としてはなんとも恐ろしげですが、「ロム モール」は渓谷の入り口にあった小さな墓地に由来するという説もあり、実際に骸骨の入った石棺も見つかっているそうです。また、「フルショーム」も「石灰窯(four à chaux)」や「分岐点(fourche)」に由来するという説があります。
「フルショームは、さわやかな柑橘系の果実のアロマの中に硬質なミネラル、スモーキーなニュアンスが感じられる。ロム モールは、フルショームよりも畑に石が多く、よりミネラル感が強い。土壌由来のしっかりとしたボディがあるワインになる」
家族の歴史をつなぐ特別なキュヴェ「ルネサンス “1928”」
イヴォン エ ローラン ヴォコレの歴史は、家族の歴史と言い換えることが出来ます。現オーナーのイヴォンは1955年生まれ。ワイナリーの5代目当主として日々活躍しています。18歳の頃に父モーリスと共に働き始め、1979年、24際の頃にワイナリーを引き継ぎました。ちょうどその年、息子のローランが生まれます。1985年には、自社瓶詰めを開始。以来、地元やフランス国内で人気を博しています。
2009年にはローランもドメーヌに参加し、主に醸造を担当するようになりました。イヴォンは、息子がドメーヌを引き継いでくれることをとても喜んでおり、自身はさらに畑での仕事を行えるようになりました。「父から私へ、そして私から息子へ継承する。そんなワイン造りを行なっているんだ」。
そんなヴォコレ家を象徴するワインが、「ルネサンス ”1928”」です。ワイン造りに情熱を注いだ、イヴォンの父でありローランの祖父にあたる、1928年生まれのモーリスに捧げたキュヴェです。ステンレスタンクが導入される以前の、昔ながらの伝統的なシャブリといえます。樽発酵・樽熟成で仕込む特別なキュヴェで、熟成はローランが担当しています。樽発酵・樽熟成のワインは、ステンレスタンク発酵・樽熟成のワインよりも、樽香は穏やかになります。これは、酵母が樽の内壁をコーティングすることで、熟成中の樽からの成分抽出を防ぐためとされています。
「樽発酵は、味に大きな影響を与えることはない。テロワールの特徴が出て、ワインに調和を生み出す」
歴史 | 1713年から葡萄栽培、ワイン造りをする家系。 1973年 イヴォンが父と一緒に働き始める。 1979年 イヴォンが引き継ぐ。 1985年 元詰め開始。 2009年 息子のローラン(1979年生)が醸造に参加。 |
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オーナー | イヴォン ヴォコレ : 1955年生まれ。5代目。 ローラン ヴォコレ : 6代目。 |
葡萄園 | プティ シャブリ、シャブリ、シャブリ プルミエ クリュ(フルショーム、ロム モール)に約26haを所有。葡萄の平均樹齢は45年、全体の50%が樹齢40年以上のもの、全体の20%が最も樹齢の高い78年です。 |
栽培 | 栽培はリュット レゾネを採用。畑の肥料は過去45年間、羊の糞由来のものしか使用していません。また防カビ剤、除草剤は使用せず、畑を耕すことで草を取り除いています。土壌に石が多く、硬いため畝と畝の間に草は生やしていません。 |
ワイン造りの物語 | 生産者訪問ブログ(2017)生産者訪問ブログ(2016) ドメーヌ イヴォン エ ローラン ヴォコレのワイン一覧 |
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