生産者情報 ―producer―

シャトー デ ゼサール

  • フランス
  • シュッド ウェスト

常にオープンマインドで新しいことに挑戦し続ける
パスカルとフラヴィが父娘で手掛けるこだわりのワイン

「自分では良いワインを造っていると信じていたけれど、
実際には全く造っていなかった。そうではないと気づいたんだ」

シャトー デ ゼサールはベルジュラックで1929年からワイン造りを行なう生産者です。オーナーで醸造家、世界市場への販売担当も兼ねるパスカル キュイセは、ベルジュラックの持つポテンシャルを信じて挑戦し続け、素晴らしいワインの生産者として世界的に知られるようになりました。パスカルは情熱にあふれ、時には豪快な物言いのオープンマインドな人物で、「私の工場は外にある!」、「畑に足を踏み入れなくなったときが、私がワイン造りをやめるときだ」、「私たちは、一つのものに縛られるのではなく、品質の為に良いと思ったものは全て取り入れている」等、「パスカル語録」として親しまれるほど数々の名言を生んできました

シャトー デ ゼサールのワインはコストパフォーマンスの高さで知られていますが、それは「マイナーな産地だから価格が安い」のではなく、「常に品質向上に挑戦し続けている」ためだと言えます。これについてパスカルは、ある事件がきっかけになっていると言います。「自分では良いワインを造っていると信じていたけれど、実際には全く造っていなかった。そうではないと気づいたんだ」。

「畑で食べたメルロは、私のワインの味。そういうワイン造りがしたい」
1990年にボルドーのシュヴァル ブランの畑に行った時、そこで葡萄の実を食べて驚いたそうです。「メルロの果実味にブラックチョコレートの風味……いったいなんだこれは!」と圧倒されてしまった彼は、帰ってきて自分の畑のメルロを食べてみたところ「甘い葡萄だ……」、ただそれだけしか感じなかったそうです。しかし、それに気づいたことがすべての始まりでした。こうして、「品質は畑にあり」という信念が生まれました。

シャトー デ ゼサールでは現在、自社で所有する葡萄畑は約60haとなり、毎年のように新たな品種を植えています。近年では新しくマルベックやソーヴィニヨン グリ、ピノ ノワールの栽培を始めたそうです。オーガニック認証はあえて取得せず、リュット レゾネで対応しています。「認証を取得すると、ベト病が発生した場合、許可されているボルドー液(銅と硫黄)しか使用できない。ボルドー液は雨が降ると流されてしまうため、何度も撒く必要がある。しかし、銅は土の中に浸透して残留してしまう。これは人体や自然環境に影響を及ぼすため良くないと考えている。私たちは、普段からベト病対策用に、オーガニックの肥料を畑に必要な分だけ撒いている。そうすることで葡萄も健康になるため、病害への耐性がついているんだ」。

「ソーヴィニヨン ブランには壮大な情熱を持っている!」
シャトー デ ゼサールは、自社畑60haの内約25haにソーヴィニヨン ブランを植えています。ソーヴィニヨン ブランのアロマは、アスパラや草のようなグリーンなもの、ピーチやパイナップルなどのトロピカルなもの、白い花のような華やかなものなど、熟度によって異なる魅力があり、それが面白いのだと言います。「ある時、ニュージーランドのクラウディ ベイを飲み、ソーヴィニヨン ブランの素晴らしさに驚いた。彼らは伝統に拘らないオープンで自由な発想を持っていた。そしてこの出会いが、”世界中のどこにもないソーヴィニヨン ブラン”を造りたいという信念となった。クラウディ ベイを真似するのではなく、独自のソーヴィニヨン ブランだ」。パスカルはその時の技術でソーヴィニヨン ブランのワインを造り上げ、輸出市場で成功を収めました。「私たちのキュヴェ プレスティージュ(FB237)が、イギリスのワインマガジンに掲載され、ペサック レオニャンのワインを集めたブラインドテイスティングでNo.1になったことがあるんだ。ペサック レオニャンの特集だったのに、その中に2本だけベルジュラックのワインが混ぜられていたんだよ!」。

「スキンコンタクトが味わいの命! 葡萄の味わいは皮にある」
シャトー デ ゼサールでは、白ワインだけでなく、赤ワインでも発酵前のスキンコンタクトを行っています。「なぜかというと、葡萄の味わいは皮にあるからだ。皮の成分が、果汁に行き渡る。収穫するタイミングを判断する際、以前は分析表に頼っていたが、今は頼らない。その時、その時に葡萄を味わって確かめるんだ。自ら畑に出向き、葡萄を味わうことにより、すべてを把握することが出来る」とパスカルは語っています。

パスカルとフラヴィの哲学は、“常にオープンマインドで偏見を持たない”こと
パスカルがワイン造りに参加するようになった80年代、フランス国内でベルジュラックワインの市場は無きに等しい状態でした。若者がバーで飲むのはパスティスやビールばかり。そこで輸出市場に目を向け、ニューワールドを始め世界のワインに触れ、「世界中で素晴らしいワインが造られていることを知り、偏見を持たず常にオープンマインドでいることが大切だ」と悟りました。オープンマインドであることで、革新的なワイン造りが出来たとも言えます。20年以上前、ベルジュラックで誰もやっていなかったスキンコンタクトや、葡萄の酸化を防ぐために夜間に収穫を始めたのが彼らでした。今では近隣の生産者もやるようになったそうです。

パスカルの娘であるフラヴィも父親譲りの性格で「ハードワークが大好き!」というほど。「ガメイに挑戦したい!このエリアで今、栽培している赤は力強い品種ばかりだから、ガメイのようなフルーティな品種で飲みやすいワインを造りたい」、「南アフリカで収穫体験もしてみたいなあ」など、何かに挑戦したいという熱い思いが感じられます。彼女もまた、オープンマインドでワイン造りに挑戦しています。

ボルドーの陰に隠れた不遇の産地ベルジュラック
ベルジュラックは、ボルドーの中心から100kmほど東へいった場所にあります。アペラシオンの面積は、ボルドーの10分の1ほどです。14世紀頃には銘醸地として広く知られていましたが、ボルドーが自分たちに有利な特権を得て、ベルジュラックを含む上流域のワインをすぐに出荷出来ないように定めたことから、名声を失うことになります。当時は保管のための技術は発達しておらず、新しいワインほど最上とされていた時代でした。つまり、出荷が遅れれば遅れるだけ、ワインは劣化してしまったのです。

「どんなにありきたりの品質でも、ボルドーワインにはボルドーとしての市場があるが、ベルジュラックは良い品質であっても市場は無かった。だから、ネームバリューで売るのではなく、高品質かつリーズナブルな価格のワインということに重点を置くことにしたんだ。また、ベルジュラックの近隣の人とも全く違う、独自のスタイルのものを目指した。そのため隣人たちから、時には(よそ者という意味で)” オーストラリア人”とも言われたよ」。

「パスカル語録」  会う度に、数々の名言を生むパスカル。ワイン造りについても、多くを語ってくれます。
キーワードは、「オープンマインド」。偏見を持たずに、世界の素晴らしいワインに触れることが出来た。また、革新的なワイン造り(スキンコンタクト、夜間の収穫)を始められた。 / 「自由であること」。ビオディナミ、オーガニック、様々な農法がある。どれも否定しないが、ひとつだけで完璧なものはない。葡萄、品質に良いと思えば取り入れる。 / 「コストパフォーマンス」。人々は昔より世界中のワインを知っている。ラベルやブランドでワインを買う人は減っている。個人的にも様々なワインを買い、消費者の目線になって考えている。ワインの値段は、多くの人が買えるものでなくてはいけない。
「さらに設備も充実」  新しいセラーの設備が加わりました。洗浄した後、窒素を充填してから瓶詰出来る機械。横幅の広い、外部に温度コントロール装置が付いたタンク等です。
「名前の由来」 伐採した山に若い木が育つ、それが沢山育っている状態をエサール(Eyssards)という。小さな木、森という意味。

Data

歴史 1929年 フランス北部出身の祖父アルベール キュイセが、ベルジュラックへ移住。葡萄畑を造る。
1950年 父レオンス キュイセが加入し、規模を拡大。フランス市場へ進出。
1982年 パスカルと兄ローランとが、ワイン造りに参加。
オーナー パスカル キュイセ : 1964年生。醸造と世界市場への販売担当。

ローラン キュイセ
 : 1962年生。英語が苦手なので、畑仕事中心。
フラヴィ キュイセ : 1993年生。パスカルの娘。ワインの専門学校を卒業し、一緒に仕事をしている。
葡萄園 自家畑55ha  10余りの違う場所にある。その内、ソーヴィニヨン ブランが25ha。
レンタル1ha ミュスカデルのみ
栽培 リュット レゾネ 品質は畑にありという考えから、ひとつのやり方に縛られず、良いと思ったものを取り入れる。
グリーンハーベストは止めた。ひとつひとつの実が大きくなってしまうし、翌年多くの房が付いてしまうので。
肥料は100%オーガニック。

収穫 : 畑で葡萄を食べて決める 目指すワインを造るには、種や皮が重要。コールドマセラシオンするため、夜間の涼しい内に収穫し、ドライアイスも使用。畑で最高の状態なので、機械で収穫。選果テーブルなど使わない。
ワイン造りの物語 酵母 : 白は選別酵母だが、甘口は天然酵母。赤は天然酵母だが、必要なら選別酵母を追加。

<スキンコンタクトが味わいの命>
白だけでなく、赤でも採用。果汁の中にある自然な酵素が、皮から味わいを抽出してくれる。

・2015年収穫レポート<前編>
・2015年収穫レポート<後編>
石川県金沢市 株式会社田鶴酒店  田鶴 浩康様より、2015年9~10月に現地ワイナリーにて収穫作業を行った内容を、レポートにおまとめいただきました。
生産者訪問ブログ(2019)

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